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建設業許可取得の意味


※本稿はなるべく分かり易く表現する為に法律用語を噛み砕いて記載されております。
そのため、法令上の本来意味と厳密には異なる文言も御座いますが予めご了承下さい。
一部建設業法その他諸法令改正後の内容が先取りで含まれている場合が有ります。




1.建設業とは?

 そもそも建設業とは、元請や下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、土木建築に関する工事(建設工事)の完成を請け負う営業をさします(建設業法第2条1項・2項)。この土木建築に関する工事(建設工事)には土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、解体工事業、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロツク工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、ほ装工事、しゆんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事の合計29種類が法律で指定されています。




2.建設業許可を取得するメリット(デメリット)

【工事金額等の縛りからの解放】
 建設業の許可を取得しなくとも1件消費税込500万円未満(建築一式工事の場合1,500万円未満)の工事はすることはできます。また、木造住宅で一定の条件下150u未満の建築一式工事も許可を得ずに施工することができます。しかし、実際の実務においては、資材や資源の高騰なども相まって500万円以上の工事となることが多くあります。また、許可を受けない場合は500万円という縛りを常に頭の隅に置いて注文を受けなければなりませんので、面倒・煩わしいと考える業者の方もおられるでしょう。さらには、工事を見積もったらどうしても500万円以上となってしまった場合に、工事を請け負うことができなくなってしまいます(他業者を探して直接施主と契約する等といった方法も考えられますが、その分自社の利益が減ってしまったり、施主からどうして1社でできないのかなどと不信感が生ずる可能性もあります。)。そうなるとせっかくの注文や依頼にも関わらず、自社で工事を施工できない状態となり、依頼を断らざるを得ないことが考えられます。工事金額の制限を気にせず、自由に営業できるようになるメリットはとても大きいといえます。


【対外的信用力の向上】
 建設業の許可を取得しなくとも今までの潤沢な自己資金や人脈が多分にある場合は建設業許可を取得しなくともしばらくは現状維持することができる可能性があります。しかし、現実的には今までの人脈も社長の代替わりが起きた途端失われてしまったり、今まで懇意にしてきた方が退社してしまったりして段々と仕事先の脈が細くなってきてしまうことがしばしばあります。その結果、自己資金も少なくなっていくという悪循環の現象が生じてしまいます。建設業許可を取得することによって公的資金の融資や銀行からの融資が受けられる可能性が高くなります。なぜなら、近年の銀行や信用金庫では建設関係の業者に建設業許可取得を強く勧めたり、融資の条件としている所が多く存在しているからです。
また、近年では大手の元請業者が下請業者に下請工事を行わせる場合に建設業の許可を取得することを強く勧めたり、下請工事業者を建設業許可取得業者に限定するなどといった縛りをしていることが多くなってきました。建設業許可を取得することで元請からの仕事が増えたり、受注しやすくなることが見込まれます。
さらには、相手先取引業者にも自社が建設業の許可を受けいることを示すことで信用力が高まり、受注増加の可能性が高くなります。


【公共工事受注への道が開かれる】
 建設業許可を取得した後に経営事項審査というものと受注したい各官公庁への入札参加資格審査申請を行うことで官公庁から工事の受注する機会を得ることができます。すなわち、工事の官公庁への入札には建設業許可取得が前提条件となっています。


【事業拡大に役立つ】
 建設業許可を取得することによって、上記のような信用力や受注金額の増加が見込まれます。これによって、利益が積み重なって自己資金も融資が相まって潤沢になる可能性が高まります。そして、公共工事や民間工事の実績を積むことによって知名度・信用力がさらに上昇し、事業が拡大する可能性が高まるといえます。また事業が拡大し、同業者と企業共同体(JV)を結成して、さらに大規模で社会的意義の高い工事を請け負う道が開けていくことが想定されます。


【建設業許可取得に対するデメリット】
 建設業許可を取得して事業を行っていこうとすると、上記のようなメリットが多数ありますが、デメリットもあります。これは一言でいえば「煩わしさ」といえます。すなわち、建設業許可取得後は毎年1度決算終了後、管轄の都道府県知事(場合によって国土交通大臣。以下同じ。)に事業年度終了の報告をしなければなりません。また、役員の交代などが生じた場合は会社の役員変更登記にプラスして管轄都道府県知事に届け出なければなりません。この工事の施工以外にも事務的な手続きが必要となる点がデメリットといえます。
さらに、新築住宅を建売する場合は特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年5月30日法律第66号)により、建設業者及び宅地建物取引業者(新築住宅の売主等)は、住宅品質確保法に基づく10年間の瑕疵担保責任を負うこととされております。したがって、この場合は供託や保険の加入が義務付けられていますので、事務的煩雑さと併せて金銭的な出費があるデメリットはあります。




3.総じて
 建設業許可を取得する意義はさらなる事業拡大目的と施工金額の縛りからの解放が大きな点といえます。事業の拡大段階で建設業の許可を必要に迫られて取得しなければいけない時期が必ず来ます。許可を取得しようと思っても準備が出来ていなければ建設業の許可を取得することはできませんので、将来取得しなくともするとしてもどちらにも対応できるように許可取得前に入念な準備(取引先からの注文書や契約書などを残して整理しておいたり、資金を500万円蓄えておくなど)をすることをお勧めいたします。